区民と行政の距離を近づける「ご近所SNS」

中野区役所 広聴・広報課

地域情報発信の効率化、区民同士の交流の促進に向けて2018年3月にマチマチと協定を締結した中野区。

今回は中野区広聴・広報課の高村課長にお話を伺いました。区民とのコミュニケーションにおける課題と、その解決に向けたマチマチの活用方法について、2019年10月の台風19号接近時の例を交えてご紹介いただきます。

高村和哉さん(中野区役所 企画部広聴・広報課長)
西武新宿線沿線まちづくりの担当課長を経て、2019年から広聴・広報課長に。2020年からシティプロモーションも担当業務となった。スタッフとともに、日々丁寧な広聴と効果的な広報に試行錯誤している。

区民と行政の間に存在する壁

中野区で区民への情報発信において重視しているのはどのようなことですか?

「区民の皆さんにとって分かりやすいように情報を発信する」 ことを特に重視しています。紙媒体の情報発信だとどうしても文面がカタくなってしまう。また、ホームページ等でも、介護や国民健康保険などの公的な制度は難しい情報が多く「分かりやすく伝える」という点で十分でないと感じています。

さらに、 「より多くの方に情報を届ける」 ということも重要です。一昔前は紙媒体の情報発信が中心でしたが、インターネットの普及が進む今は様々なツールの活用が重要です。

より多くの方にわかりやすく情報を届けるため、中野区ではマチマチなどのSNSを積極的に活用しています。ただ、単にSNSを使うだけでは、行政からのやや一方的な情報発信になってしまう。そのため私たちは区民の声を聴く「広聴」にも力を入れています。

広聴を行う際に難しさを感じる場面はありますか?

区民の皆さんからメールで意見を頂いたり、アプリで要望を募集したりしているのですが、やはり行政に対して何か意見を言うのは少しハードルがあるのだと感じます。

「道路が壊れているので直して欲しい」という要望や、区の政策に対する意見など、「具体的に行政にどうにかしてほしい」という内容は多く頂きます。それはすごく重要なご意見です。一方で私たちは、区民の皆さんが普段の生活の中でどんなことに興味・不安を抱くのかということもなるべく把握したいと考えています。しかしそういったご意見を直接伝えてくださる方は多くありません。

マチマチを活用していて良かったなと思うのは、そういった区民の「生の声」が見えること。例えば、「この手続はどうすればいいんですか」「小さい子どもが遊べるところを教えてください」などの質問が区民から出て、それに他の区民が回答している。こういった 素朴かつ本当のニーズが見える場所 というのはあまり無く、参考になります。

昨今の新型コロナウイルス感染症に関する情報発信についてはいかがでしょうか。

新型コロナウイルス感染症に罹患された方々には、一日も早い回復をお祈りいたします。

新型コロナウイルス感染症に関する情報発信について、最も課題であると認識している点は、ご高齢の方などデジタルツールを利用しない方への情報伝達です。区報などの紙媒体での情報発信は情報量が限られ、即時性にも欠けるため、これらを補うことに難しさを感じますね。マチマチを通じて、区民の感じていることや、情報発信のアイデアなども窺うことができれば良いなと思っています。

区民の生の声からヒントを得る

区民の「生の声」が見えることで、実際に役立った例はありますか?

直近だと、2019年10月の台風19号接近時ですね。

あの時、行政のホームページへアクセスが集中したことで、区のホームページが繋がりづらい状況が発生しました。ホームページには、ハザードマップや緊急情報など緊急時にお伝えしたい情報を載せていたので、他の媒体で皆さんにどう情報を届けるのが良いかと考えました。

そのときマチマチを見ると、ある区民の方が「中野区災害情報共有コミュニティ」でハザードマップのデータを共有してくれていたんです。 「なるほど」と思い、それを参考に区の各種SNSでハザードマップの画像等を投稿しました。多くの方がリツイートやいいねをしてくれて、少しは情報を伝えられたのだと感じました。

区民の行動が行政の施策に直接反映されるケースもあるんですね。

はい。区民の皆さんがどういうやりとりをしていて、どういう反応をするのかというのは施策を考える上ですごく重要です。SNSはそれを把握するために有効なツールです。

ただ、SNSもサービスごとにそれぞれ特徴があるので、使い分けが必要だと考えています。例えばTwitterは世界中のたくさんの情報が流れていて、情報量が多すぎて錯綜してしまうという面もあります。一方、マチマチはコミュニティが近所に限定されているため、「中野区災害情報共有コミュニティ」で発言している方は中野区民だということが分かります。そのため、区民同士でより実のあるやりとりが行われていると感じます。このようにサービスごとに利用者層が違うので、それぞれで流れる情報や反応を見比べ、区としての対応を考えられたのが良かったですね。

中野区民全体の横のつながりをオンラインでつくる

今後中野区でどのようにマチマチを活用していこうと考えているか教えて下さい。

いい意味で、今後どんな風に活用していくのかまだイメージが無いですね。SNSというのは一般の方が多く利用するため、行政側では想像もつかないような使われ方をすると思っています。例えば前述の台風19号接近時の使われ方も、協定締結時は想定していませんでした。最初は、住民発信の細かい地域情報が可視化される良いツールだと考えていたのですが、それだけではなかった。

行政で施策を考える際には、何らかの仮説を立ててから決めていくのが一般的です。ですが、 行政には想定できないような「サイレント・マジョリティ」の声が見えてくるのがマチマチのおもしろいところです。 地域に関する、私達では気づかないような課題を、区民が気づかせてくれるのです。その声をもとに区の取り組みを考えていけるのは理想的だなと思います。

マチマチは管理がしっかりしていて誹謗中傷などがないので安心できますし、情報を発信する方もある程度責任を持って発言しているのがわかります。区民の皆さんにとっても、リアルな地域情報を安心して得られる場というのは貴重だと思います。情報のやりとりを通して区民同士の横のつながりがどんどん広がってほしいです。

区民同士の横のつながりができると、どんな良いことが?

一つは、 今まで地域情報が得にくかった方にも情報が伝わっていく という点です。中野区では、20〜30代の単身世帯や海外からの移住者などが増えており、区民のライフスタイルが多様化しています。それぞれの層に情報を届けるため様々なツールを活用しますが、職員の数も限られており、どうしてもリーチしきれないこともあります。マチマチのように、区民同士で情報を拡散・交換できる場があるのはすごく良いことだと思います。

二つ目に、中野区の重要課題のひとつである 「地域包括ケアの推進」にも繋がる という点です。高齢者の単身世帯が増えるなか、どのように地域全体で見守り支え合い、安心して暮らせる環境をつくるのかという課題です。今はデジタルツールを日頃から使うご高齢の方も増えています。今後さらに中野区のマチマチユーザーが増えることで、オンラインでの交流を通して区民同士が見守りや支え合いを行い、「地域包括ケアの推進」の実現につながると考えています。

高村さん、ありがとうございました!