災害時に求められるものとは?「情報発信」と「助け合い」

鴨川市役所 経営企画部経営企画課

房総半島の南東部に位置する鴨川市。「地域コミュニティの活性化の促進」「情報発信の最適化・効率化」に向けて、2019年7月にマチマチとの協定を締結しました。

今回は鴨川市経営企画課の熊切さんにお話を伺いました。協定締結から約1ヶ月後の9月に台風15号が鴨川市を襲った時、市役所がどのような役割を担い、住民同士でのコミュニケーションがどのように行われたのかについてご紹介いただきます。

熊切優子さん(鴨川市役所 経営企画部経営企画課 秘書広報係)
2005年から、市の意見や要望を把握し諸施策を市民に周知する広報広聴業務を担当。現在も引き続きホームページ管理や2014年からはSNSを活用した情報発信なども担当している。

見慣れた風景が、一夜にして変貌する

台風への事前の備えとして、どんなことを行なっていたのでしょうか?

台風15号が接近する前日、気象庁が緊急記者会見で「今晴れているということで安心している人も多いかもしれないが、夜になって接近とともに世界が変わる」と呼びかけていたのを記憶している人も多いかと思います。

鴨川市でも、前日から災害警戒本部が設置され、土砂災害や河川の氾濫に備えていました。台風接近時には毎回、市のサイトへのアクセスが集中していたこともあり、「緊急災害ページ」に切り替え、事前の情報発信を行なっていました。

今回の台風は想像を超えたものだったと思うのですが、どのような状況でしたか?

9月8日から9日の未明にかけて台風15号が接近しましたが、これまでに聞いたことのない、凄まじい風の音が印象に残っています。鴨川市では9日未明から停電となった地域が多く、自分の住んでいる場所も電気が止まりました。当然、テレビを見ることもできず、情報が全く入ってきませんでした。

風が止み、空が明るくなったころ、市役所へ向かいましたが、ガラスや瓦が散乱した通りを見て、これは思っていた以上の被害が出ていると感じました。市役所に着くと、非常電源のある災害対警戒本部のある階以外はすべて停電。 パソコンも使えず、蒸し暑く薄暗い事務所の中で、スマートフォンを使い、市内の被害状況、千葉県内の被害状況、国や県の動向の情報を収集をしていました。

▲台風通過直後の市内の様子

情報収拾もままならない状態だったんですね。

そうですね。実際の被害を確認するため市内を巡回したのですが、想像以上の被害でした。多くの家屋で屋根や瓦が飛び、ガラスやがれきが道路に散乱、大きな木が倒れ道路をふさいでいるのを目の当たりにしました。

衝撃的だったのは、何本もの電柱が根元からなぎ倒され、電線が垂れ下がっている光景です。いつもの見慣れた風景が大きく変貌し、自然災害の恐ろしさを肌で感じたのと同時に、これは、今日、明日には直らないのではないかという不安がよぎりました。幸い、市役所では当日の午後には電気が復旧。パソコンを立ち上げ、情報発信をすることができました。

実際に鴨川市では、1万8,100世帯が停電。それに伴い、電気ポンプで水をくみ上げている家庭では断水が発生し、5,755戸で水が出ない状態となっていました。市民の方から「電気や水道はいつ復旧するのか?」「倒木が道をふさいでいるので何とかしてほしい」というお問い合わせが多く寄せられるなか、追い討ちをかけるように、携帯電話基地局でバッテリー切れが発生。市内全体で携帯の電波状況が不安定な状態になりました。

電気が使えるようになれば、この混乱は収束に向かうと考えていましたが、1週間ほど停電が続いたタイミングで、復旧延期の発表を聞かされた時が、不安や疲れのピークでした。

▲ブルーシートや土のうの物資配布に長蛇の列

変わる状況、難しい災害時の情報発信

停電や断水が続く状況で、どのような情報を発信していたのでしょうか?

市では通常、防災行政無線、安全・安心メール、公式ホームページ、フェイスブックでの情報発信を行なっています。しかし、停電で防災行政無線が一部地域で使用できなくなったため広報車で巡回して放送をしたり、お知らせの紙を貼って回ったりしていました。

最初のうちは、道路の通行止め情報や被害の状況、支援物資や食糧・水の配布、給水所の開設などライフラン情報など市のお知らせが中心でした。日が経つにつれ、断水や停電でお風呂に入れない方へのお風呂開放情報や災害ボランティアなど、ご支援いただける方の情報も増えてきました。 このように、状況やタイミングによって必要な情報が変わるので、市役所としては正確に迅速に発信できるよう努めていました。

▲家屋被害が多く自衛隊の要請も

目まぐるしく状況が変わる中での情報発信、どんなことが大変だったのでしょうか?

難しかったことが2つあります。

1つは、どうやって正確な情報であることを伝えるか。

市民の方向けにホテルの大浴場を無料開放していただけることになり、その情報を発信しました。すると、口コミでどんどんと広まっていったのですが、「本当に開放しているのか?」という問い合わせがホテルに寄せられ、電話がパンクしてしまう事態に。ホームページに掲載する文章に「市内ホテル様のご厚意で開放していただいています。鴨川市が確認した確かな情報ですので、緊急時以外、各施設へのお問い合わせはご遠慮くださいますよう、お願いいたします。」という一文を付け加えてもらい、収束しました。

もう1つは、注意喚起についてです。

当時、「応急処置のためのブルーシートを貼るなどの名目で、高額な料金を請求する業者がいる」という情報が市職員の所属する消防団や地元の知人から寄せられていました。警察や災害対策本部に問い合わせても、実際に被害があったという事実は把握できませんでしたが、「見積書などで工事の内容や金額を確認してから契約しましょう」という内容を、ホームページやSNSに掲載し、注意を呼びかけました。このまま注意喚起をせずに、市民の方に被害が出る方が問題だと考えた結果です。

正確な情報を伝えること、そして、不確かでも被害を出さないように情報を発信することの難しさを感じました。

地域の不安を解消する住民の助け合い

台風時のマチマチの使われ方についてお聞かせください。

マチマチは、市のホームページやフェイスブックにアップした内容がそのまま「公共機関からのお知らせ」に転載されるので、手間がかからずとても助かりました。また、 停電でパソコンが使えない間はホームページからの発信ができなかったため、私も個人的にマチマチから災害情報を発信していました。

台風19号の際には「鴨川市災害情報共有コミュニティ」が立ち上がっているのを発見して。 市のホームページがアクセスの集中で重くなる中、地域の皆さんが情報を転載してくれたり、地域の避難所の様子を話しあっていたり、自主的な情報交換が行われていました。「迷っていたけど避難所へ向かいました。来て良かった」というコメントを見た時、住民同士の交流が進み、絆ができていると感じてホッとしました。

改めてマチマチに期待することを教えてください。

台風15号、19号、そして10月25日の大雨災害と未曾有の災害が続き、市内がパニックになりました。現在も屋根の修理が追い付いておらず、屋根にブルーシートがかかったままの家も多く残っています。復興はこれからです。

最近、都会から移住してくる方が増えうれしい一方、自治会に加入する方は減っています。そのような中で、市役所でできることは限られていて、 今回の災害を通じて市民の皆さんによるご近所同士の助け合いや活発な情報交換の重要さを再確認しました。

マチマチは、まさにご近所さんが繋がれるツールです。もっと知ってもらい、もっと積極的に投稿やコメントをしていただいて、地域の皆さんの不安を解消できるコミュニティに育って欲しいですし、それを足がかりに復興に向けて、地域が活性化すればよいと思っています。

熊切さん、ありがとうございました!